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あなたがそのプロダクトを使ってしまう理由

シリコンバレーや東京の著名なグロースの専門家を招聘し開催された リクルートGrowth Hacker Month と呼ばれるミートアップの最終回において, Nir Eyal 氏が登壇した. 講演内容は グロースハッカーにとって必須分野となる消費者の行動心理学 について. 特に ユーザーがそのプロダクトをつい使ってしまうような習慣をつけるための理論 である Hooked というモデルの話であり, オンライン/オフラインを問わずに様々なサービス(プロダクト)に応用できるという強みを持っている.

Hookedの概要

Hookedはフレームワークであり, そのフレームワークの目的はは, プロダクトをユーザーの習慣として取り込ませる ことです. グロースハックのための手法としてよく知られている AARRR における Retension 部分を最適化するためのフレームワークと考えて良い. プロダクトをユーザーの習慣として取り込ませるためにHookedでは Trigger(トリガー), Action(アクション), Reward(リワード), Investment(インベストメント) という4つのステップをサイクルとして回ることを求めています. 最も重要なことは, これら4つのステップが自然にサイクルとして循環することである. トリガーからアクションにスムーズに遷移し, アクションからリワードへの遷移も, リワードからインベストメントへの遷移もスムーズに行われ, そしてインベストメントが次のトリガーになる, この状態がHookedが機能した状態と言える.

では, 以下で4つのアクションの定義について見ていこうと思います.

Hookedの4つのステップの定義

Trigger(トリガー)

人が新しい習慣を身につけるときは, ほとんどのケースにおいて「以前からある習慣を基礎として, それが拡張される形で徐々に習慣が身につく」と考えられている. その拡張の土台となるものを Trigger(トリガー) と呼んでいる.

外的トリガー

ユーザーが次に何をするべきかをユーザーに教える ことが外的トリガーである. Facebookに登録していないユーザーがFacebookに訪れた時,「ユーザー登録してほしい」というメッセージ(=次に何をするべきか)を伝える。ユーザー登録したら今度は、「知り合いをx人探してみよう」と言って、友人をFacebook上で探して「友達申請」をしてもらうよう伝える。そしたら今度は、気に入った記事をシェアしてもらったり、近況を伝えたりしてもらうためのナビゲートを行う。

これらが外的トリガーとなる。

内的トリガー

内的トリガーは少し分かりにくい。内的トリガーとは 感情 のことを指す。感情の中でも特に、 ユーザーの記憶と関連し, 次のアクションを無意識的に決める感情 のことである.

Action(アクション)

アクションとは, モチベーション , アビリティ , トリガー が組み合わさったときに発生すると言える. この中の3番目の トリガー とは先ほど説明した 外的トリガー内的トリガー のことである. では, 残りの モチベーションアビリティ について説明する.

モチベーション

モチベーションが上がる, という表現があるがこれは具体的にどういう状態のことを言っているのかを詳しく見てみる. すると, モチベーションが上がるとは,

  • 喜びを求める
  • 痛みを避ける
  • 希望を求める
  • 恐れを避ける
  • 社会的承認を望む
  • 拒否を嫌がる

のうちのどれか(若しくは複数個)に起因して発生するものと言える. 実際, 至る所に掲載されている 広告 にはこれら6個の要素のうちのどれかが(若しくは何個も)含まれているはずである.

アビリティ

アビリティとは, その行動をとるための障壁の少なさ/簡単さ を表す. どれだけモチベーションを高めて, トリガーがあったとしても, 行ってほしいアクションのアビリティが低い状態, すなわちアクションをするのにとてつもない時間やお金, 手間がかかってしまうようでは, そのアクションは取られないままになってしまう. では, アビリティを高めるために必要なことは何なのか? それは次の6個を減らすことを指す. その6個とは,

  • 時間
  • お金
  • 身体的努力
  • 考える手間
  • 社会的逸脱
  • ルーティンでないこと

である. 先ほどのFacebookの例では, ユーザー登録後の知り合いを探す手間を減らすことでアビリティを高める工夫が至る所に行われていたはずである. 例えば, Googleアカウントと接続することで, Googleアカウント内の連絡先データから知り合いと思われる人をリストアップしたり, 既に形成されているFacebook内のソーシャル・グラフを利用したり, また友達申請のためのアクションをボタン1つで終わらせられるようにしたりなどである. これらによって, 時間であったり身体的努力, 考える手間などを減らしアビリティを高めていっている. これはFacebookだけに限らずtwitterなどでも行われていることだし, 他にも至るところで使われていることである.

Reward(リワード)

人が行動を行うには, 脳の一部に刺激を加える必要がある. では脳に刺激が加わるのはどういったタイミングであるか? それは, 何かを得られそうだ と予想したタイミングである. 実際にモノを得た時ではない.

Webサービス上でのユーザー行動も同様で, 何かを得られそうだ と思わせることで, ユーザーに行動を起こさせることができる. これをリワードと呼んでいる.

では, Webサービス上でのリワードを3種類説明する.

ソーシャルリワード

ソーシャル性があるプロダクト(サービス)の場合に発生するリワードである. Facebookやtwitterでコメントを投稿したときに, その後に何が起こるかは分からないが, 何かを得られそうだ と感じて投稿をするはずである.

ハントリワード

ハントとはHunt, つまり狩猟のことである. 全ての動物は探すこと(=狩猟)が好きである. 人間も同様で, より多くの情報を自分で探すことが好きなのである.

セルフリワード

セルフリワードとは, 自己を極めていくこと に起因するリワードである. 本を読んだり, ニュースサイトを見たりするのは, 自己を極めていこうとしている結果, つまりセルフリワードと言える. RSSやメールの未読をなくすための努力や, 会員カードによるポイント付与もセルフリワードに含まれる.

Investment(インベストメント)

ここまでで, Trigger, Action, Rewardと3つのステップを見てきたが, ここまでのステップでは, AARRRモデル でいうところのAttentionまでしかなく, 習慣化させる(=Retension)の要素は全くない. Retensionさせるために Investment(インベストメント) が存在する.

Investmentとは, ユーザーの行動から何かのアウトプットを返すことである. ただし, そのアウトプットをユーザーの行動時に即座に返すのではなく, ある程度の時間が経ってから アウトプットを返すように仕組むのである. なぜ, ある程度の時間が経ってからアウトプットを返すのかといえば, それがRetensionに繋がるからである. 即座にアウトプットが返されてしまうとRetensionに繋がらなくなってしまう. ここでのアウトプットが次のトリガーになるようなプロダクト設計を行うと, またトリガーから, アクションに繋がり, リワードし更なるインベストメントが得られる. これが順調にサイクルとして機能することで, プロダクトをユーザーの習慣として取り込ませる ことに成功するのである.

参考

Hooked: How to Build Habit-Forming Products

Hooked: How to Build Habit-Forming Products